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オススメの一冊

No.030 フランス 2005.03.12 up
田園交響楽 ジッド
ジット:田園交響楽 概要
身よりもなく、まったく無知で動物的だった盲目の少女ジェルトリュードは、牧師に拾われ、その教育の下でしだいに美しく知性的になっていった。  しかし待ち望んでいた開眼手術の後、彼女は川に身を投げて死んでしまう。 開かれた彼女の眼は何をみたのだろうか。  牧師と盲目の少女、牧師の妻と息子との4人の愛情の紛糾、緊張を通して 『盲人もし盲人を導かば』 の悲劇的命題を提示する。
感想
この作品には 『盲目』 の人がたくさん登場する。 牧師に引き取られた少女の 『盲目』 はその名の通り目が見えないこと。  そして、主人公の牧師の 『盲目』。 それは、少女に対する愛を意味する。  そして、牧師の妻の 『盲目』。 これは生来的なものかもしれない。 そして、牧師の息子の 『盲目』。  これは、少女を死に追いやった最終的な原因かも知れない・・・。
これらのさまざまな 『盲目』 が複雑に絡み合い、物語は進められてゆく。  そう、人は誰しも 『盲目』 な状態に陥りやすいものなのです。 それを新ためて考えさせてくれた作品でありました。
新潮文庫 ISBN 410204504X 定価¥340
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No.029 日本 2005.02.20 up
銀の匙 中勘助
中勘助:銀の匙 概要
虚弱で痩せて人見知りの強い臆病な私を溺愛し生き甲斐として育ててくれた叔母。  小さな口に薬を含ませるためにその叔母が特別に探してきた銀の匙を私はいまも飽かずに眺めていることがある---。  明治時代の東京の下町を背景に、見も心も成長してゆく少年の日日をきめ細かく、リリカルに描いた自伝的小説。
感想
風景だけでなく、人間の描写もきめが細かい。  擬態語や擬声語の使い方にも独創性があり、言葉の持つ美しさをしみじみと感じることが出来る作品。  子供の頃の思い出とは、やはり美しいものなのですね。 例えこの作者と同じような体験をしていなくとも、その美しさには通ずるものを感じます。  自分の過ごした幼年期の黄金時代を思い出させてくれる、大人のための文学です。
角川文庫 ISBN 4041028078 定価¥400
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No.028 日本 2005.02.11 up
白仏 辻仁成
辻仁成:白仏 概要
筑後川下流の島に生まれた稔は発明好きで戦前は刀鍛冶、戦中は鉄砲修理、戦後は海苔の加工機製造などをしてきたが、 戦死した兵隊や亡き初恋の人、友達、家族の魂の癒しのため島中の墓の骨を集めて白仏を造ろうと思い立つ。  明治大正昭和を生きた祖父を描く芥川賞受賞第一作。 1999年仏・フェミナ賞外国文学賞を日本人初受賞。
感想
幼き頃より抱き続けてきた疑問 『死について』。  その問題に真っ向から挑み、一生をかけて答えを見出してゆく主人公 『稔』 に共感を覚えました。  永遠の疑問・哲学などは、やはり一人の人間の一生、または身近な出来事の中に答えがあるのだなぁとあらためて実感。  読み終わったあと、『死は敗北ではない』 という言葉が心に沁みて残っていました。
文春文庫 ISBN 416761202X 定価¥457
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No.027 日本 2005.02.09 up
兎の眼 灰谷健次郎
灰谷健次郎:兎の眼 概要
大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとしない一年生・鉄三。  決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おうと決意する。  そして小谷先生は次第に、鉄三の中に隠された可能性の豊かさに気付いていくのだった・・・。  学校と家庭の荒廃が叫ばれる現在、真の教育の意味を改めて問いかける。  すべての人の魂に、生涯消えない圧倒的な感動を刻みつける、灰谷健次郎の代表作。
感想
人生の先輩・サトミ姉さんよりいただいた本であります。  この作者といえば 『手と目と声と』 のイメージがとても強かったせいか戴いた時には少々抵抗を感じたのですが、読み始めてみると、これがまた!  文章の拙さは然程気にならず、元教師ならではの良い味が出てますね。  読み始めると胸が熱くなり、一気に読まずにいられなくなるほどの秀作です!
角川文庫 ISBN 4043520018 定価¥571
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No.026 日本 2005.01.08 up
醍醐の櫻 水上勉
水上勉:醍醐の櫻 概要
私は集中治療室で不思議な夢をみた---  敗戦の前年、伏見墨染町の輜重輓馬隊にいた私の持ち馬の「照銀」が、ベッドの傍にきて女ずわりをして、しきりに私に古い昔の話をする。  現実の私は醍醐のリハビリセンターに移り馬を繋いだ桜樹を捜して歩く。  表題作の 『醍醐の桜』 をはじめ1989年天安門事件に遭遇、急遽毅国したその日に心筋梗塞で倒れた著者の、生きて人を愛しく想う佳品7編を収録。
感想
2004年9月8日に他界された著者を偲んでの紹介です。 リハビリに通う日々と日常の生活。  非常にほのぼのとした内容で、著者のあふれる人間味がよく出ている作品です。
人間は 『死』 というものを受け入れたとき、こんなにも余裕で生きることが出来るのでしょうか?  人はみな、歳をとるとこういう気持ちになるのでしょうか・・・?  こういう年のとり方、オススメです(笑)
新潮文庫 ISBN 4101141266 定価¥400
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No.025 中国 2004.12.17 up
阿Q正伝 魯迅
魯迅:阿Q正伝 概要
民族のマイナス面として典型化された 『阿Q』 を通じて、 『辛亥革命』 の内臓を痛烈にあばき、その失敗を教訓として民族的決意を促す主題を貫く。  魯迅の作家的存在を文学史上に定着させた代表作。 処女作 『狂人日記』 、日本留学の思い出 『藤野先生』 の他、 『孔乙己』 『小さな事件』 『故郷』 『家鴨の喜劇』 『孤独者』 『眉間尺』 を収録。
感想
主人公の 『阿Q』 は決して歴史的偉業を成し遂げた人物ではない。  お調子者でいいかげんな男なのだが、自分の信念を持って行動する。  しかし、上手く立ち回るだけの器がないので、無実の罪から不幸の結末を迎える・・・。  不幸といえば不幸なのだが、この世の中、自分の信念を持って動ける人間が一体どれだけいるのだろう・・・?
『社会を改良する』 のに小説を利用しなければならなかった時代、辛亥革命前後の社会的政治的混乱期に、激動の中国を生き抜いた、作者の深い悲しみが感じられる作品集です。
角川文庫 ISBN 4042204015 定価¥380
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No.024 日本 2004.11.09 up
蛇を踏む 川上弘美
川上弘美:蛇を踏む 概要
藪で、蛇を踏んだ。 『踏まれたので仕方ありません』 と声がして、蛇は女になった。  『あなたのお母さんよ』 と、部屋で料理を作って待っていた・・・。  若い女性の自立と孤独を描いた芥川賞受賞作 『蛇を踏む』 。  『消える家族』 と 『縮む家族』 の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く 『消える』 。  ほか 『惜夜記』 を収録。
感想
彼女の繰り広げる 『うそばなし』 は、全てに境界線の存在しない不思議ワールド。  みな好き勝手に変形し、キリのない世界を繰り広げてゆく。  自分の意思とは関係なしに、固体・液体・気体の生成変化を繰り返す・・・。
何と説明してよいか分からないのだが、音楽と文学に共通点を見い出すことが出来ました。  実に秀作! ああ、久しぶりに鳥肌が・・・。
文春文庫 ISBN 4167631016 定価¥390
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No.023 イギリス 2004.11.09 up
風を見た少年 C. W. ニコル
C.W.ニコル:風を見た少年 概要
少年は人のこころを読みとることができた・・・。 少年は空を飛ぶことができた・・・。  少年はいくさの中で人々に勇気を与えた・・・。 自らの死 を通して、人々に 『生きることの美しさ』 を残して逝った 『あいつ』 は、今はあなたの心の中で生きている。  著者初めての日本語による書き下ろし長編ファンタジー。
感想
正直に言って、ファンタジーでここまで感動したのは初めてではないかと思う。  泣きたいような、走り出したいような、叫びたいような・・・ そんな感覚に襲われた。  もし出来ることなら、この少年に逢ってみたい。 いや、私はこの少年になりたいのかもしれない。  こういう本を読むと、束の間の幸福に浸れる自分を少し悲しくも思う。 映画とかお芝居とか見ていないけれども、原作はとても素晴らしい作品です!
講談社文庫 ISBN 4061840568 定価¥430
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No.022 日本 2004.10.11 up
春琴抄 谷崎潤一郎
谷崎潤一郎:春琴抄 概要
盲目の三味線師匠春琴に仕える佐助の愛と献身を描いて谷崎文学の頂点をなす作品。  幼い頃から春琴に付添い、彼女にとってなくてはならなぬ人間になっていた奉公人の佐助は、後年春琴がその美貌を弟子の利太郎に傷つけられるや、彼女の面影を脳裏に永遠に保有するため自ら盲目の世界に入る。  単なる被虐趣味をつきぬけて、思考と官能が融合した美の陶酔の世界をくりひろげる。
感想
『痴人の愛』 は、たぶん普通の人から見たら、愚かな愛。  この物語も、ある意味愚かかもしれない。 でも、これこそが究極の純愛。  とても美しく、そして危うい。 そしてこの作品、日本語がとても美しい。  日本が好きだとは言い切れないけれど、やはり日本語は好きだ。  そう思わせてくれた作品です。
新潮文庫 ISBN 4101005044 定価¥286
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No.021 フランス 2004.09.18 up
ポネット ジャック・ドワイヨン
ジャック・ドワイヨン:ポネット 概要
交通事故で母を失った四歳の少女ポネット。 突然のことに、ポネットは母の死が理解できない。  叔母の家に預けられ、従兄弟たちと一緒に生活するが、ポネットはその遊びの輪にも加わらず、独り草原で母を待ち続ける。  そしてベッドの中でお祈りを繰り返す。 『神さま、どうかもう一度、ママに会わせて下さい・・・』  四歳の少女が自分の言葉と感覚で死というものをひたむきに理解しようとする姿。  静謐で真摯な思索に満ちた、珠玉の物語。
感想
自分の目の前で母親が亡くなったのに、母親の死を信じることができない・・・。  周囲の人たちは彼女に事実を認めさせようと働きかけるのだが、当の本人は自分の中に閉じ篭らないと母親に逢えないのだと思い込む。  ポネットの気持ちも、周囲の気持ちも、痛いほどよく分かる。 それなのに、どうすることも出来ない・・・。
幼い子供にとって、母親とはどれだけ大切な存在なのかを新ためて思い知らされ、ずっと涙を零しながら読み続けた作品でありました。
角川文庫 ISBN 4042769012 定価¥640
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